昨年、2017年6月2日に民法の一部を改正する法律が公布されました。
そのうち債権関係の規定については約120年ぶりに社会情勢に合わせた整理が行われ、その改正内容の施行日は2020年4月2日となっております。
本記事で注目するのはその債権関係の規定のうち、173条の【債権の時効】が2年から166条において5年に見直されたことについてです。
~民法の一部を改正する法律案新旧対照条文より一部を抜粋~
●現行
第百七十三条 次に掲げる債権は、二年間行使しないときは、消滅する。
一 略
二 自己の技能を用い、注文を受けて、物を製作し又は自己の仕事場で他人のために仕事をすることを業とする者の仕事に関する債権
三 略
↓
●改正案
第百六十六条 債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき。
二 権利を行使することができるときから十年間行使しないとき。
第百七十条から第百七十四条まで 削除
~抜粋終わり~
なぜ注目するかというと、労働基準法 第115条【(賃金の請求)時効】は、民法 第173条等で規定されている債権の時効と当時の社会情勢に合わせて規定された経緯があるため、今回民法の債権の時効が改正されたことにより労働基準法の時効の規定も民法の改正内容と昨今の社会情勢に合わせて改正される可能性があるからです。
実際に厚生労働省において「賃金等請求権の消滅時効の在り方に関する検討会」が2017年12月より2018年5月現在で計3回開催されており、第1回目の資料によれば、次回4回目からはいよいよ具体的な消滅時効期間のあり方の検討に入ると思われます。
検討会において既出の検討項目には「賃金請求権」の他に「年次有給休暇請求権」「付加金」等が挙がっており、これらの消滅時効が現在の2年から5年に改正されれば、時間外手当等を含む未払いの給与、有給休暇の未消化分などの請求権、付加金が発生した場合の計算基礎期間が長期にわたることになり、金額も莫大なものへとなりかねません。
事業主の皆様におかれましては、現在の労務管理状態の把握や計画的な有給消化など今後への対策を検討いただくとともに、今後の検討会での内容を注視していく必要があると思われます。
参考資料
●厚生労働省 賃金等請求権の消滅時効の在り方に関する検討会
第一回 資料4