厚生労働省から本年8月、「平成28年度の監督指導による賃金不払残業の是正結果」が公表されました。この是正結果の公表は、平成14年度から毎年度行われているものです。
今回公表されたのは、全国の労働基準監督署がサービス残業に関する労働者からの申告や各種情報に基づき企業への監督指導を行った結果、昨年4月から本年3月までの期間に不払いだった割増賃金(不払い残業代)が各労働者に支払われたもののうち、その支払額が1企業で合計100万円以上となった事案を取りまとめたものです。
■平成28年度の監督指導によるサービス残業の是正結果のポイント■
①是正企業数1,349企業(前年度比1企業増)
→うち、1,000万円以上の割増賃金を支払ったのは、184企業
②支払われた割増賃金合計額127億2,327万円(前年度比27億2,904万円の増)
③対象労働者数9万7,978人(前年度比5,266人の増)
④支払われた割増賃金の平均額1企業当たり943万円、労働者1人当たり13万円
監督指導の対象となった企業では、その監督指導の下、定期的にタイムカードの打刻時刻やパソコンのログ記録と実働時間との隔たりがないか確認するなど、サービス残業の解消のためにさまざまな取組を行い、改善を図っているようです。
厚生労働省では、引き続きサービス残業の解消に向け、監督指導を徹底していくとのことです。今回公表されたのは平成28年度の是正結果ですが、この頃から、働き方改革、長時間労働の是正、
労働時間の適正把握などへの関心が高まっていました。そんな中、サービス残業に関する是正企業数などは減少していません。
このような結果になったのは、実質的にサービス残業が増えたということではなく、監督指導・是正指導が厳しくなった結果だと思われます。
例えば、次のような些細な時間が積み重なって、多額の不払い残業代になった事例も紹介されています。
●休憩時間中に会議が行われていた
→その会議の時間は労働時間=その時間分の賃金が不払いになっている
●会社が指示したユニフォームへの着替えを行った後にタイムカードを打刻していた
→その着替えの時間は労働時間=その時間分の賃金が不払いになっている
上記の事例のように、2017年1月20日に「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン 」が策定され、現在はこのガイドラインに基づいて指導が行われていることから、以前にも増して労働時間の基準がより明確に厳しくなっております。
適用範囲、労働時間の考え方、労働時間の適正な把握のために事業所が講ずべき措置について、本ガイドラインにおいて明らかにしていますので、本ガイドラインに基づいた労働時間の適切な管理をお願いします。
(参考URL)
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000149439.pdf
サービス残業だけでなく、産業医の選任や健康診断異常所見ありの労働者に対する医師の意見を求めるなど労働基準監督署の調査内容は年々厳しくなっております。
監督署の監査が入ってから慌てて対応するのではなく、いつ監査があっても落ち着いて監査対応できるようにしたいものです。
不明点につきましては、お気軽にご連絡くださいませ。