昨年年末にかけて、各地で労働基準監督署の臨検調査が多く実施されました。

 「ブラック企業」の呼び名が取沙汰されたり、大手有名エステティックサロンの労使問題についても、昨年新聞や報道で大きく取り上げられました。労働環境に関する世間的な関心は今後ますます高まることになるかと思います。

万が一調査に当たった場合、焦って対応を迫られることのないよう常日頃から事前に対策を取ることをお勧めいたします。労働基準監督署の調査が当たるパターンとして以下のようなものがあります。

①予告なしに突然会社に訪問される                              

②あらかじめ書面や電話などで予告される                           

③労働基準監督署に期日を指定して呼び出される。

予告なしで訪問調査される場合、監督官の「証拠を押さえたい」という意図が読み取れます。

予告の上で調査をすると会社側が都合の悪い書類を隠す可能性があるため、敢えて予告をしないと思われます。つまり突然訪問するということは何らかの労基法違反の確信がある場合、もっというと「内部に精通している者の申告があった」可能性が高いと言えるかもしれません。

労働基準監督署の調査は拒否することはできません。

労働基準監督官は刑事訴訟法に規定する「司法警察官」の権限を持っており、調査を拒むと労基法違反者として送検され、罰金を含む罰則を適用される恐れがあります。

但し、調査予告があった場合でも日程変更を申し出ることは可能ですし、突然労働基準監督官が来たとしても「担当者が不在である」等の理由で日程変更を丁寧にお願いすれば、多くの場合は応じてもらえます。

労働基準監督署は、労働基準法をはじめとした労働関係法を企業が守っているかを監督する機関ですが、近年の調査をする主な目的は「長時間労働などの抑制による労働者の健康被害の予防」にあると言えます。

長時間労働は精神疾患や脳・心臓疾患と因果関係があるとみなされつつあるため、未払い残業代を遡って支払う是正などをさせ、長時間労働の抑止を狙っていると考えられます。

労働基準監督署調査でヒアリングされる項目は主に下記の通りです。

①従業人人数(パート・アルバイトを含む)

②36協定の届出・更新

③就業規則の作成・届出をしているか

④年1回以上健康診断をしているか

⑤残業単価の計算方法

⑥勤務時間管理方法(タイムカード・WEB勤怠・出欠表記のみ等)

⑦深夜残業があるか

⑧従業員の有休日数管理(パート・アルバイト含む)

⑨雇用契約書の整備

⑩産業医/安全管理者/衛生管理者の選任(常時50人以上の労働者のいる事業所)

⑪安全衛生委員会の設置(常時50人以上の労働者のいる事業所) 

未払い残業代の支払いを恐れるあまり、タイムカードを改ざんしたり、賃金台帳を書き換えたりすることはやってはいけないことです。虚偽が明るみになった際、イメージダウンにつながります。

労働基準監督官も人ですから、虚偽の報告をする企業に対する心証が悪くなることは言うまでもありません。あくまで真摯に対応することが肝心です。 

当事務所では労働基準監督署の調査対応も数多く行っておりますので、まずはお気軽にご相談ください。